『エリザベート』

「エリザベート」…それは、私が宝塚史上、最も好きな作品です。今日はどうか、私とエリザの歴史も含め、長い話を聞いてください。

私が初めて「エリザベート」に出会ったのは、初演雪組のビデオ。ものすごい衝撃を受けて、それから狂ったように毎日毎日再生三昧で、VHSビデオも擦り切れんばかりの勢いでした。

初めて生を観たのは初演ガラコンサートです。動きがないだけでほぼ本公演と同じだったため、かつてないほど興奮し「このままでは帰れない」と友人2名がそのまま我が家に泊まって、朝まで雪組ビデオ(たまに星組)観賞。“もう一度この感動を再共有しなければ死ぬ”くらいの勢いで、そういう興奮って一生のうち何回もないので、本当に貴重な経験でした。

今でこそ洒落た海外ミュージカルは当たり前になりましたが、当時は本当に革命的作品でした。女子供の趣味というイメージの宝塚が、本格的ミュージカルを上演した、という革命です。

         

 エリザ崇拝者の私に次に降ってきた幸福は一路さんにインタビューでした。いかにエリザが好きか、350回はビデオを見てることを熱弁しましたが、「ウッソ~そうなんですかあ」ケラケラッと笑われ、現実に引き戻されました。

 

 その後、いろんな組で再演したり、東宝でも上演され、欠かさず観に行きましたが、いずれも2~3回程度観ただけ。すでに各役へのこだわりも大きくなり、なにより観過ぎで、感動のハードルも高くなってしまいました。

 そんな中、本場ウイーンのエリザベートが上陸することが決定し、リーヴァイさん・マヤさん・ルカスさん3人と、マテさんにそれぞれインタビューする機会を得て、またまた興奮マックス!

 エリザ信者として、悔いのない人生を送ってきました。

 ようやく本題に突入です。

 今回は5年ぶり8回目の上演です。れおんくんの後を継ぐ人気者みりおちゃんのお披露目で、みっさまフランツ、だいもんルキーニで、もう始まる前から話題沸騰です。実際には話題沸騰どころかチケットはどこにもない状態に。

 さて、みっさま演じることになったフランツは、辛抱役で地味で難しい役です。マザコンだし、浮気するし、シシイに振り向いてもらえないしで、情けなさが前面に立つことから、魅力ある役とはなかなか言い難い。ルキーニの方が常に舞台にいる発散系キャラで、聞かせどころ満載の熱唱もあるし、フランツとは違う方向性で難しい役だけど、面白そう。どっちも高い歌唱力が求められますが、歴代演者の顔ぶれを見ると、ルキーニの方が全員トップになってきてる路線系です。フランツ決定は予想どおりでしたので、特に驚きも嘆きもありません。そこそこやってくれるだろうなと普通に想像できましたし。でもルキーニも見たかったなあ~という残念さも若干…。しかし実際に舞台の幕が開いたら、そんな思いは完全に吹っ飛ばしてくれました。

*以下、猫丸は来週掲載されますので、併せてごらんください。

【みりおちゃん】

小さい!小さすぎる!!2ちゃんで「黒天使長」と書かれて笑いました。

いや、小さいことは罪じゃないんです。小さくてもいいじゃないの。いまさらごまかしようないんだから。開き直って堂々とすりゃいいのに、ヒール&ラッキーで不自然なブーツの踵にどうしても目を奪われてしまうし、90度のつま先立ちで、あれじゃあ満足に踊れないだろうと。実際、黒天使の中でもフィナーレ男役群舞でも、ひときわダンスの回転スピードが遅くて、花組ダンスにとって命の‘キレ’がまったく存在していません。踊れないわけじゃないだろうにもったいない。みりおちゃんにとって「カッコよく踊ること<ブーツのヒール&ラッキー」なんだとしたら、残念なことこの上ない。あんなに美しい顔を持っていても、コンプレックスには勝てないのか…という切なさが前面に見えて萎えてしまうのです。

みりおちゃんの場合、これまでのトート像にこだわらず、髪を少し短めにして悪魔っぽい新しいトート像を作れば良かったのに。そしたら小さくてもOKだし、むしろそれがチャームポイントになる。ロングヘアにロングコートは子どもが背伸びしてるようにしかみえず辛い。歴代がみんなそのへんは完全に作り上げてただけに、どうしても比較映像が浮かんでしまいます。

こういう髪型で。  こういうイメージ(カレー参照)

そしたら、私はみりおちゃんに全力でハマり、惚れこんだと思います。

歌もものすごく上手で素晴らしいんだけど、なぜか心に響いてこない…なんでだろう?

春野さんの「ひーとーのいーのーちを、うばあてぇぇぇ」の「ぇぇぇ」みたいに、脳髄をとろけさせるような甘い響きがないからなのか。

姿月さんのように「最後に勝つのはこのおーれだー」が怖すぎて客をちびらせる迫力には至らないからなのか。

でも音だけ聞いてたらちゃんと迫力もあって、浸れるんですよね。やっぱルックスとのバランスなんじゃないかなと思ってしまいました。あくまで個人的な意見ですが、残念です。

【らんはな】

らんはなちゃんはいろいろ批判されることも多い人ですが、私は「オーシャンズ11」で大好きになりました。ダンスがとにかくカッコいい! 特にフィナーレは男役以上にカッコ良くて、娘役のダンスでここまで惚れこませていただいたのは初めて。とむさまを思い切り踊らせてくれただけでも感謝したいです。

歌は苦手のようで、エリザベートをするにあたって最も風当たりが強かった点ですが、私は問題ないと思いました。地声になるとややアニメ声が顔を出しますが、裏声がキレイに通るし、気分をそがれることはまったくないので、存分に浸らせていただきました。

エリザベートといえば、お花様。お花様を語らせたら、また紙5枚はいるので割愛しますが、そこまではいかずとも、十分つとめていたのではないかなと思います。今回はその他のキャストが気になりすぎて、あまり集中していなかったと言うのもあります(爆)

【だいもん】

予想通り、素晴らしかったです。プロローグの「えーりーざべー」という熱唱は、かけあうみりおちゃんを圧勝してました。いっぱいいっぱい感が全然ないのがすごい。余裕たっぷりに役を操っていて、もうそんなとこまで行ってたんか!って感じです。

だいもんを最初に意識したのは「くらわんか」でしたが、友と2人でとむさまに大感動しながらも、貧乏神のびんちゃんがどうしても気になると、いつまでもひきずっていたのを思い出します。そして、まなとバウの「バンドネオン」で完全に墜ちました。コヤツ、花組の神髄技「奥さん、どう?」を完全にマスターしとるやないかと!!!! 感無量です。

2幕のアドリブが好評ですが、あの生真面目なだいもんに、1日2公演とか毎日内容変えて客席をウケさせられるの?と驚きましたが、師匠みっさまに指導していただいてるとのこと。やっぱり。

『そこのおねえさん、今オレがはまっているもの分かる? 1.カメラ 2.ボーダー 3.君 』

これなんか、絶対みっさま作でしょう。「2.ボーダー」これを出してくるセンスは、だいもんごときの若者にはまだないはず。毎日、鍛えられているに違いありません。良かったわあ~

とりあえずだいもんは言うことなし。

【キキちゃん】

一番、いい意味で裏切られました。「オーシャンズ」でのキラキラオーラがまぶしかったのに、その後のバウ主演があまりにもイケてなくて、ただいまガッカリ指数上昇中。これじゃカレーに抜かれるわよ…と思ってましたが、今回は良かった! 歌は決して上手い方ではありませんが、とにかく感情が伝わってきました。ものすごく良かった。ナウオンでの態度や、エアありがとうございましたをやってくれてるあたり、みっさま信者とみた。キキちゃんへの愛復活(爆)

しかし、キキちゃんはデカい。「闇が広がる」のふりつけがあまりにも不自然で、キキちゃんの膝折に常時力が入ってる様が切なさを盛り上げています。みりおちゃんが大木にしがみつくセミみたいに見えました。

【カレー】

この公演初の歌アチャーの人登場! この前のバウですっかりハート泥棒された私でも、さすがに浸れなかった(笑)相変わらず500系新幹線のルックスも麗しく(りくは0系)、皇太子風味も完璧です。ダンスもシャープでステキなので、この先、なんとしてでも歌を特訓してほしいです。そしてどんどん私のハートを奪ってください☆

いよいよ本編@みっさまの感想です。

ルキーニが飛び出してきますが、第一印象は「えらいキレイやなあ」でした。ボーダーTシャツの白い部分がピカピカしてて、煉獄にいながらも毎日、風呂に入ってそうな清潔さです。ルキーニと言えば轟理事。さすがに超えることができないのは「あの時、轟理事は男だった」もはやそう思わないと、つじつまが合いません。

☆霊廟

いよいよ始まると、もっとも胸が高鳴るシーンです。

ここでフランツの歌が

「妻エリザベート」「気難しい」いつもここまでしか聞こえなかったのに

(ちなみに、ここの気難しいの‘しい~’がステキ)

「いつも旅に出たまま」「帰らずさすらう」って、続きがあるのを初めて知りました。

フランツの歌は時に低すぎて、二重あごにしても出ないくらいなのに、さすがみっさますごい!と

いきなり興奮してしまいました。

☆トートと出会うシシイ

らんちゃんは少女時代がよく似合います。可愛い!まりんちゃんのパパも言うことなし! 

お花様の時は「外国に旅するのね~」のところで、毎回必ず泣いていました。このたったワンフレーズに「知らない外国への夢と憧れ、自分に開かれた未来への希望、チョイ悪オヤジへの変化球的尊敬」みたいなものがぎゅっとこめられていて、私の涙腺を直撃するのです。お花様はさらに「自由に生きたい」で…(長くなるので以下、割愛)。

らんちゃんにとってシシイはドストライクなキャスティングではないので、普通に可愛くて、普通に歌えてたら十分だと思います。

親戚の中にひそかに、瀬戸さん、天真さん、がりんちゃん、せんなさん等がいて豪華です。せんなさん、やっぱりアゴが目立つけど美しい。

黄泉の入口でトート閣下登場。椅子がさらにゴージャスになっています。ここで春野さんが毎回、組んだ脚を高々と田原俊彦しながら立ち上がるのがツボでしたが、みりおちゃんも結構あげてます。

シシイに恋に落ちるシーン。ここはどのトートも苦心してるところですが、みりおちゃんはなかなかいい感じでした。

☆謁見の間

 いよいよみっさまの登場です。

事前に「みっさまフランツなら、嫁姑問題もうまくとりもって、息子もしっかり教育して、ハプスブルクは安泰、事件起こらず」などと言われてましたが、実際はどうだったでしょうか。

 若くてハンサムな皇帝フランツ・ヨーゼフⅠ世陛下と紹介され、中央に鎮座するみっさま。見た目は想像通りの皇太子。何が驚いたかって、半オクターブくらい高い声で「許可する(ポン)」という、思い切った若づくりに度肝を抜かれました。見た目が老け落ち着いているので、まさかの戸惑い。小池先生から「貫禄を消せ」と終始怒られまくってたそう。「ナポレオン」で狡猾な政治家やってからの転身は、さぞ難しかろうて。

【あ、死刑囚の母、あんなに泣いて…可哀想! 書状を見るとたいしたこともしてないよね。

許してあげたい。あ、でもママが。そうか…ママの言うことはいつも正しいし…ヨシ!

ぼくちん、頑張るよ!】

「却下(辛いので両手で押す。バン)」

【ああ~ごめん、ああああ~~~~(組んだ手に顔を埋める)】

みたいな心の流れがものすごいストーリー化されてて、みっさまの中に劇場が見えます。かつてフランツの演技にここまでドラマが含まれているのを見たことがありません。

☆お見合いのシーン

水色の軍服がステキです。脚の長さにご注目ください。

ヘレネへの「ようこそ」な挨拶がとても優しいです。歴代フランツはみんな、そこはかとなく冷たくて、シシイを観たとたんに態度を変えるのが、なんかモニョる男だなと思ってたので、これはイイ。「瞳はアーモンドで…」も正規のメロディーです(高くアレンジしてた人もいる)

 シシイへのプロポーズの歌も声が高い! ホントに戸惑う高さですが、それを歌いこなすのがみっさま。「ありいがとお」の自然さに感動です。ここはどうしてもお笑いポイントになるのに!

 若くてチェリーボーイ風なのに、キスシーンだけやたら上手なのもツボです。

「母上に、かけあうよ」も正しいメロディーでした(高くアレンジした人もいる)。

☆あけてくれ

素晴らしい!感動しました。もともと切ないシーンで、フランツの見せ場の一つではありましたが、こんなにも深く歌えるんか!!!と、驚愕しました。みっさまの歌唱力に関して何でも知ってるつもりの自分でも、まだまだ驚かせてもらえます。MUSICパレットでも存分に皆さまにお聞かせしましたが、やはり舞台での芝居感情が入ると、さらにぐっとこんなにも深さが加わわるのかと。

友人の「扉にかけた指先にまで哀しみがあふれていた」という表現に1千万バートイシュル。

☆鏡の間

何も言うことはありません。じっくりとお聞きください。

☆マダムヴォルフ

ここはもうぜひすべてのお客様に、みっさまに注目していただきたいです。ご機嫌に登場して席に着いてからの、ギャル一同がなだれ込んだときの表情です。

【な、なんだ、この騒ぎは…。え、こ、これはいけない。ここ王宮なのだ。だいたいこの破廉恥な格好の娘たちはなんだ!年頃の娘が…なげかわしい!一体どうしろというのだ、私に】

という演技がめちゃめちゃ細かくて、目が離せません。

陛下に一生懸命説明し、おすすめする重臣たちがまたイイ。さおたさんに前に連れてこられて、さらに困惑度を深めますが、マデレーネを見せつけられ、思わず「ぬっ」となるみっさま。

マイティマデレーネ、ものすごい迫力です。意外にも可愛くて、若干、友近に似てなくもないのですが、筋肉隆々で、タチアナどころではないダイナマイトさ。華奢で子供っぽいシシイとまったく違うタイプで、これはそそる!

マダムがりんにほっぺをチョロリンとなでられるところは、スカステでも映ってましたが最大ピークの萌えシーン(笑)。にもかかわらず、マイティマデに誘惑されまくり、ついに辛抱たまらんみっさまがマデを引き寄せキスしますが、これがエロい! 突然のエロ陛下、たまりません。

☆父ちゃん、怒る

ルドに対し、新聞破る → 私が生きている限り… → もう何も言うな!(怒)

3連発、最高です。

怒鳴る姿もしびれるのですが、抑制された怒りから震える声と背中、後ろ姿にたたえる哀しみ。

こんなに演技が上手い人だったなんて…(いまさら)

☆夜のボート

エリザファンの中では、このシーンが一番好き、という人が少なくありません。

何も言うことはありません。じっくりとお聞きください。

しかし、ここで疑問が…

浮気はしたものの、フランツはその後、激しく反省して、心からシシイを待っています。

「母上はもういない、帰っておいで。君の帰りを待っているよ」の歌等、一連の少しばかりの登場でも、その気持ちは痛いほど伝わってきますし、その上、この夜のボートでの、フランツ人生を賭けた告白です。

こんだけ優しくて、シシイのことを心から想ってる人がいるのに、シシイはなぜ孤独だ孤独だと不満ばっか垂れて、なんのために放浪してるのか? ただのわがまま女?というあらたな、かつ大きな疑問が沸いてきました。みっさまの深すぎる役作りは、ストーリーの中身を変えてしまうヤバイ状況かもしれません。

☆最終審判

フランツ最大の見せ場です。突如若返って、トートに宣戦布告。「エリザベートは私の妻だ」と、ドヤアとたたみかけるカッコよさ! みりおちゃんに勝ってしまうんじゃないかとちょっと心配でしたが、なんとか対等にはなってるようです、良かった(爆)

 エリザフリークの夫が「トートがフランツに臆病な本心をズバリ突かれて、やっとルキを使って本気で殺そうとした経緯が初めて分かった!みっちゃん、すごいなあ」と言ってました。ほう。今までなんとなく「カッコええシーンやなあ~」と流してましたがそんな意味が(爆)(いまごろ)

☆愛と死の輪舞

 何も言うことはありません。じっくりとお聞きください。

 ただ、太くてすみません。みっさまは「巨乳・驚異のウエスト・高い位置にある張りのある腰」というダイナマイトボディで、男役体系の対極にあるため、もともとがっしりしてるところを補正するととんでもなく太く見えます。もっとカッコいい衣装にしてよ(怒)

☆群舞

みりおちゃん、「フォッ」ってとむさま仕込みの掛け声、何度も言うのやめてほしい。ものすごい気合入った叫びのあとに、どんなすごいの来るかと待ってしまうので、その後のまったりダンスがよけい辛いから。みりおちゃんのために、ここはひとつどうか収めてほしい。

エリザの男役群舞は、ネ 申 ですね。

数ある中でもナンバーワンといってもいい完成度とカッコよさではないでしょうか。この群舞をきちんと踊れてこその男役。もはや登竜門と言ってもいいでしょう。

大階段の男役たちが、交互に横にのける中、真ん中をゆっくり降りてくるみっさま。それだけで思わず目頭が熱くなってきます。

誰よりも早い回転、誰よりも高く上がる脚、誰よりも反る体の角度。

何も言うことはありません。じっくりとご覧ください。

最後は、夫の「群舞の中に入れて躍らせたらアカン人」という一言で〆させていただきます。

今回の花組は、エリザ史上最高の完成度だと思います。そうか?そうなのか?

とにかく、フランツがエリザ史上最高だったのは間違いないのです。

なぜなら「こんなフランツ、観たことない」だったからです。

いや、驚きました。

ファンの私の期待を大きく、違う意味で大きく裏切ってくれたみっさま。

私もまだまだ修行が足りませんな。

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