なんといっても上田久美子先生の作品です。
「月雲の皇子」で衝撃を受けた私の当時の公演評は、
過去最高の絶賛で大興奮の嵐。
続く「翼ある人びと」にも感動し、「星逢い人」で過去最高の大号泣。
「金色の砂漠」は置いといて(爆)
とにかく期待値も相当高く持っていました。
今回jはまあさまの退団公演でもあるため、ハンカチもスタンバイ。
結果、泣くほどの感動ではありませんでしたが、
上田先生の描く世界観は、ことごとく私のツボに入ります。
ロシアの雪原に佇む軍服とロングコートのまあさまとか、
まずもうこれだけでOK。ずるい。
大階段をセットに持ってきて、そこに赤いじゅうたんを敷いてあるのが、
非常に効果的に使われています。
まあさま率いる兵士たちが下りてきて、男役ダンスが始まるのもカッコいいのですが
ラスプーチン愛ちゃんが皇妃りんきらのドレスを持って銀橋を渡り、
その大階段を上る途中でまあさまが銀橋から愛ちゃんの背中を撃つ。
この構図のなんと美しいことよ!!!!
こういうのって、いままでの演出家は絶対できなかったと思うんですよね。
かつてオギーの「マラケシュ」でも思いましたが、
ただ大掛かりなセットを使うのではなくシンプルなまま、
今までと違う視点のアプローチと、
大劇場の良さをいかした演出が、新鮮でとてもいい。
上田先生の作品は往々にして暗くて重いです。
それが苦手な人は、ただ眠くなるだけかもしれません。
しかし、私はこの上田先生の「沈黙芝居」がめちゃめちゃ好きなんです。
いたたまれないほどの沈黙に、腹が鳴ることさえ許されない、
客席にも流れる緊張感。
昔、大好きでたまらなかった岩舘真理子の漫画の、
あの息苦しいまでに重い沈黙世界を思い出してしまうのです!
まあさまはこの空気感を活かすのがとても上手だと思うのです。
そしてうららちゃんも上手いと思う。
2人のかけあいはとても絶妙で、これぞまさに上田芝居。
よくコミュニケーションが苦手な人で、人と会話してて沈黙が耐えられず、
いらんことをいっぱいしゃべってアタフタする人がいますが、
まあさまにそんな動揺は一切ありません。
不機嫌なわけではなく、ただ何時間でも沈黙オッケー。
これぞ大人の余裕。
それが演技にも表れています。
さほど苦悩する様子も見せないまま、
まどかちゃんと政略結婚を受け入れるまあさま。
しかし愛ちゃんに「お前、まどかを愛してない、ほかに好きな女がいるだろう」と
思いっきり指摘されたときの、驚くでもない、キョドるでもない、困るでもない、
でも否定はできず、ただ言葉というものを忘れてしまったかのような、
なんともいえない表情が、たまらなくうまかった!!!
おおげさな顔芸をする人は、上田先生の作品はできないと思います。
「金色の砂漠」はなぜあんなにイマイチだったんだろう。
それは、みりおちゃんやキキちゃんが、
上田先生のお芝居と合ってないからではないかなあと思いました
(みりおちゃんが悪いのではなく、ただ芝居の相性という点で)
(すべて私の主観)。
そして、まあさまのダンスはとても優雅。
ロシアの雪原に良く似合う。
長い手足というのがこんなにも美しいものかと、
いつも、何度でもうっとりしてしまう。
みりおんとのデュエットダンスは絶品でした。
しかしながらうららちゃんがあまりにもダンス下手すぎて、
2人で踊るシーンでは、せっかくの幻想的な世界が現実に引き戻されて辛い。
うららちゃんは固いというか、腕の使い方が独特すぎて「女紅ゆずる」みたい。
世界観ぶち壊しに近い…これはちょっと厳しい〜。
そして、最後の方は「性格のいい人たちによる仮面のロマネスクみたい」
とも思いました。
柴田作品の古き良き香りも感じられたかも。
題材的に見たらもっと感動作になってもいい気もしますが、
これは公演を重ねるほどに練れていって、
深みを増していくのかなと期待しています。
とにかく、まあさまにはとっても合っていました。
最後がこの作品で良かったと思います。
ショーは、まあまあです(爆)
稲葉先生って、一時期、すごい勢いを感じたのですが、
だいたいネタが出尽くした感があって、新鮮味はなし。
とりあえず主題歌のノリがいまいちなのは痛い。
その前に、衣装がひどすぎます。
アルミホイル? 鉛? 少しも可愛くないしきれいじゃない。
案の定 “ひどい衣装と思ったら必ずこの人”な河底さんでした。
あの人は、どういう流れで今も存在しているのでしょうか、本気で謎です。
ショーはすでにマンネリっぽかったのですが、
最後にまあさまの一人黒燕尾があって、
これで全部オールオッケーにしてしまいました。
そのノーブルさにおいて今の宝塚では最高峰だと私が信じる
まあさまの黒燕尾をたっぷりと堪能して、
最後は全部持っていってくれたので、良し!
次、見た時、どう変わってるのか、とても楽しみです。
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