琴ちゃんで『1789』は、宝塚既存の演目ではこれさえできればもう文句は一切言いませんなくらい、私の中では最高の夢でした。「ロックオペラモーツアルト」「赤と黒」そして「1789」、これがフレンチロックミュージカル3作目となりますが、どの作品も本当に素晴らしかった! 天性のリズム感が本領発揮できる名曲の数々は、これぞ礼真琴と言いたいカッコよさが縦横無尽に炸裂しています。
――1788年夏、フランス、ボース地方。ある日、重税にあえぐ農民のもとへペイロール伯爵(まゆぽん)がやってきて、農民らを逮捕し、土地を奪うと宣言する。ロナン(琴ちゃん)は抗議に乗り出すが、聞く耳を持たない軍側から銃を向けられ、かばった父が撃ち殺されてしまう。己の無力さに憤るロナンは、父の仇をうち、土地を奪い返すため、妹ソレーヌ(愛子ちゃん)も振り切ってパリへ出るのだった。パリの街角で、革命家のデムーラン(ありちゃん)、ロベスピエール(キワミ)らと出会ったロナンは、人間が生きることの意味を考え始めるのだが……。
ロナンは等身大の青年なので自毛です。「赤と黒」に続き自毛。本当にありがとうございます。演出家たちは琴ちゃんのことを「隣に住んでそうなトップスター」とか「貧しい農民が似合う」とか、そこはかとなく失礼なことを言ってますが、その可愛らしさが魅力であり、ロナンはまさにそんな琴ちゃんの良さが活きる役だったと思います。明るくてみんなに愛される反面、孤独や悲しみ、逃れられない憎しみも抱えている。その翳りもまた、琴ちゃんらしくあるのでした。
そもそも「ディミトリ」「赤と黒」と、濃く重い作品が続きました。私も琴ちゃん会8年目。最初は「児童福祉法違反やで」と爆笑してましたが、「ディミトリ」からなにかが変わったような気がして、最近ますます戸惑っています。長い間「陽」の人だと思ってましたが、大人になって本来の持ち味が開花してきたのかと……やだ、素敵(違)
【キワミ、成長する】
キワミがロベスピエールとな! 前回、たまちゃんが2番手とほぼ名言された役で、ボディパ大ナンバーもあるので、絶対ありちゃんと予想されただけに、世間を驚かせました。しかし、実際のキワミの美しさはもはや目がつぶれそうなほどで、たくましさもマシマシになっているではありませんか。周りがあまりにも歌ウマだらけなので、時々手すりも必要になりますが、本人比で歌もかなり上達しました。なにより、2幕始めの『誰のために踊らされているのか』の超絶カッコいいナンバーは、これ以上ない檜舞台です。
♬「だ」れのために「お」どらされて「い」るのかよくみきわめろ♪とか、もうツボ。いずれの決めポーズも全員キレがいいし、キワミの空手経験が活きる振り付けもいい。
♪目を覚まーせ見逃すな「チャチャ」⇒手を叩きたくなるし
みんなが拳をふりあげながらインベーダーゲームみたいに中央に寄ってくるのとか、全員そろってななめ移動するのとか、もうすべての振り付けがゾクゾクする。
そんな名ナンバーの真ん中にいるキワミ、最高にカッコいいぜ!
ロベスピエールはヅカでおなじみのフランス革命系作品に数多く登場し、おむね冷酷に描かれています。クールな役作りは、そんな後年の人物像を意識させ、演技力の深まりを感じました。
【ありちゃん、リーダーシップ養成中】
ありちゃんデムーランは、前回、かちゃ様がやってた役です。悪気のないブルジョアさ自慢と無邪気な良い人さ加減が、ありちゃんの可愛らしさにハマりまくりで、絶妙にロナンをイラつかせます。ソロナンバーが新曲になって、みんなを率いて鼓舞する、さわやかで壮大な曲に代わっていました。露出度的にはロベピとあまり変わりませんが、この曲のおかげで2番手らしさを印象付けています。なにより、包容力やたくましさを強く感じましたし、やがては琴ちゃんのあとを継いで、星組のトップになる準備を着々と進めていることを実感します。
ありちゃんは今回、琴ちゃんの途中休演に伴い、ロナンの代役も演じました。偶然、私もその公演を観ることができましたが、想像していた何倍も素晴らしい完成度で感動しました。ロナンの難しい楽曲を豊かな声量と歌唱力で朗々と歌い上げて客席を圧倒、フィナーレのダンスまで完璧につとめあげ、今すぐトップになっても不思議ではないオーラがあったと言っても過言ではないでしょう。
しかしわずかな期間で仕上げた代役、さぞ無我夢中だったと想像に難くありません。というのも、可愛いはずのありちゃんが、とっても怖かった(笑)。哀愁と愛嬌たっぷりの琴ロナンに比べ、ありちゃんロナンはとにかく強そうで、一軍隊率いてそう。お前たちにおれら貧しいものの気持ちがわかるか!とキレるシーンでは、あまりの怖さに、ぴーちゃんデムーランが「話し合おう」と腰を抜かしながらビビる姿が、暴れる不良をなだめる学級委員に見えました。
【代役でイキらないぴー】
ぴーちゃんは弁護士のダントン。あいかわらずイキリが全開で憎めません。歌もうまいのですが、ひとこちゃんと同じく高音がヤケクソ歌唱で、心癒されないのがミソ。一度2人でデュエットしてみてほしい。
ダントンの新人公演は、碧音君が演じましたが、こちらもむちゃくちゃ上手くてびっくり。RRRで主演が見てみたいものです。
さて、ぴーちゃんも代役公演ではデムーランを演じることになりました。これが素晴らしかった。イキリを完全に封じ込め、上品でやさしいキャラになっていて、めっちゃ良かった。こんな演技ができるんや(失礼だから)高い音になるとヤケクソ女子声が一瞬出るものの、ソロナンバー「武器を持て」もすごく良かったです。ぴーちゃんは“おもしろい”役者さんですが、デムーランのようなシュッとした役もまた見たくなりました。
【蹴りが一級品のまゆぽん】
ペイロールはまゆぽん。納得のキャスティングです。琴ちゃんと言えば、撃たれ専科、殴られ専科ですので、相手が同期とくればますますその能力は発揮されることでしょう。特に牢獄でまゆぽんが琴ちゃんの頭に蹴りを入れるシーンは、どうみても本当に蹴ってるようにしか見えません。本気で心配になってくるレベルですが、琴ちゃんも同期ならではの息の合い方と自慢してたので、大丈夫なんでしょう。でもやっぱり信じられないくらいリアルで、音さえしてるような気もする。「安心してください。当たってませんよ」って安村みたいに毎回、声明を出してほしい。
ちなみにまゆぽんは前回、アルトワ伯の手下3人組の1人をやってて、ご陽気にトランプのかぶりものを着てたんですね。感慨深いです。
【愛子ちゃん魂の熱唱】
ロナンの妹ソレーヌは、99期自慢の愛子ちゃんです。ソレーヌはロナンを追ってパリに出ますが、生きていくには夜の女になるしか道はなかった、そのやるせなさをロナンにぶつける歌が素晴らしすぎて、んもう~~~大好き!!!! 歌唱力の高い愛子ちゃんですが、いつもとは全く違った歌い方で、このガツンと来るパッション…亡き本田美奈子さんの舞台を思い出しました。『赤と黒』の時もたいがい感嘆しましたが、あらゆる役柄でこんなに歌い方も変えられるなら、もう二度とただの娘役はやらないでほしい(それもどうなの)。退団してからもすごい役者になっちゃうんじゃないかと期待しています。
新人公演では、推しの鳳華るりなちゃんが演じて、これまた素晴らしい歌唱力で大満足!これで世間にもだいぶ認識してもらったはず。でもるりなちゃんが本当にすごいのは、キレッキレのドヤダンスなんです。早く前に出てきて~
――ヴェルサイユ宮殿では、マリー・アントワネット(くらっち)が夫のルイ16世(ひーろー)に愛想をつかし、ギャンブル遊びとフェルゼン(あまと)との恋におぼれている。国王の弟アルトワ伯爵(せおっち)はこのスキャンダルを利用して、王位を手にしようと企んでいた。ある日、アントワネットは王太子の養育係オランプ(舞空瞳)の手引きでフェルゼンと落ち合うが、ロナンに見つかり騒動に。オランプはアントワネットを護るためロナンを強盗に仕立てたが、そのためロナンは秘密警察らにバスティーユ監獄へ連行されてしまう。
【凄ヒロくらっちの集大成】
くらっちは、歌も演技も美しさも、マリーアントワネットを演じるに文句なし、まさに有終の美を飾っています。すべてを受け入れたあとのソロは涙をさそいました。くらっちはトップにこそなれませんでしたが、「阿弖流為」や「龍の宮物語」「ドクトル・ジバゴ」「マノン」に、「王家に捧ぐ歌」のアムネリスや「赤と黒」のルイーズと、実は誰よりも華麗なヒロイン歴を誇る、隠れ凄ジェンヌ人生だったのではないでしょうか。2番手娘役でもサヨナラショーをした前例があったと聞くので、くらっちもしてほしかったです。豪華な相手役もいることですし、どんなすばらしいサヨナラショーになったことか!?
【ダイソン目力とピンク銀橋せおっち】
前回、みやるりが演じたアルトワ伯は、妖艶かつ性別不明なルックスが大変好評だったため、アルトワ=美みたいなイメージがつきましたが、せおっちに不足はありません。ドラキュラ伯爵かとみまごう妖しさにダイソン並みの吸引力を持つ目力。高貴なイヤミくんみたいな可愛さもある星組アルトワ爆誕です。わかりやすい悪者感も最高ですが、本編が終わった後の銀橋ソロ歌唱におけるピンクのキテレツ衣装も絶品でした。あの衣装を着こなしてこそ宝塚男役。この公演を最後に専科に異動してしまいますが、みんな大好きせおっち。せおっちなしで生きていけない琴ちゃんのためにも、どうか最後まで一緒にいてあげてください。
手下3人組は、さりお、大希、修造娘。さりおは演技が安定してますなあ。オランプちゃんが大好きなので、親分アルトワからも守ろうとするあたり、ちょっとかわいいです。たまちゃんとハルトを足して2で割ってシュッとした顔の大希は、『ディミトリ』の新人公演でめっちゃ上手かったですが、今回の新人公演ペイロールもまゆぽんを上回る貫禄でもう若手とは呼ばせない。修造娘はあいかわらず可愛くて吹けば飛ぶような線の細さですが、新人公演のロナンは素晴らしかった!持って生まれた“スターの華”とはこれか。約束された抜擢を自らの力でねじふせていました。
代役でさりおの役をやった鳳真くんが話題を呼びました。VERDADのカラオケ店員といったほうがわかりやすい鳳真くん。コミカルな役ばかり注目されてますが、めぐ愛の新人公演でやったオンブルが超素晴らしかったので、渋いおじさんをぜひ今後見てみたいものです。
【なぜ、から始まる2人の恋】
自分のせいで大変なことになったと焦ったオランプは、監獄に勤める父(みきちぐ)の助けを得て、ロナンを独房から救い出しました。
そして2人が銀橋で逃げる道中、恋が生まれる問題のシーンです。まずテンポよく軽口をたたき合うのがとってもナチュラルで可愛くて、こういうのがことなこは本当に似合う。からのイケボ「なぜ」。なこちゃんと一緒に心の中で「ひょええええ」とあわてふためきますし、その後の「助けてくれたお礼だ」のキスは何回見てもAED必須なのですが、なんでみんな冷静に見れるの? さらに、なこちゃんが去り、一人残された琴ちゃんがスポットを浴びながら歌うシーンでは、口元の傷を手で触れられるたびに、超絶カッコよくて毎回気絶しそうになります。
普通に考えたらとんでもねえ男だしありえないのですが、礼真琴さんだったら恋に落ちちゃう説得力100点満点。そしてこんなドラマチックかつロマンチックなシチュエーションを作り出すイケコの脳内にも、たいがいなんというかその…男性ですよね?(そこ)
――1789年5月5日。ルイ16世の招集により、僧侶、貴族、平民の代表による三部会が開かれる。だが、それは形だけのもので、第三身分の意見は通じない仕組みとなっていた。ネッケル(オレキザキ)の諫言もルイ16世の耳には届かない。一方、病がちだった王太子が死去、アントワネットは天罰だと自らを責めた。サン・ドニ大聖堂で再会したロナンとオランプは互いの気持ちを知るが、2人は敵同士、結ばれない運命と悟る。
やがて第一身分の僧侶の大半が平民に合流し、不満を募らせた国民の96%が国民議会の成立を宣言するつもりだと知ったルイ16世は、アルトワ伯に言われるまま、会議場の門を閉鎖。デムーラン、ロベスピエール、ダントン、そしてロナンらはついに革命運動に立ち上がる――。
【ロナンのリーダーシップ】
ロナンはデムーランやロベスピエールに対し、お前らに俺たち農民の気持ちがわかってたまるかとブチ切れ、いったんは飛び出したものの、本気で戦おうとする彼らに心動かされ再び戻ってきました。みんなはロナンが戻ってきたことに喜び、彼をリーダーのように慕っていくのですが、ちゃんと説得力がありました。前回の月組版で「なんでロナンが持ち上げられるのかがさっぱりわからねえ」と感想書いてた部分です。
今回は最初の広場から、センターで歌い踊ってる時点で「明るくていいやつじゃん」から始まり、印刷所で夕渚さんや天希さんに同意を求めつつ不満を爆発させる隊長になったり、2幕頭のボディパで誰よりもキレのいいダンスをアカペラで披露するなど、声はデカいわ、歌は上手いわ、ダンスはキレるわ(ミュージカルスターとちゃう)、その求心力に、みんなが「すごくリーダーっぽい!ついていっていいっスか!」みたいな気持ちにだんだんなっていってるのが納得できました。ちなみに先日、月組版を見返したら、おんなじことやってました(爆)
そして『サイラモナムール』です。
♪何一つおーそーれーぬーこーとーなーくー ダンダンダンダンダンダン♪
この階段を少しずつ降りていく音と、足を踏み鳴らす音。血沸き肉踊りますね!
むっちゃくちゃカッコいい。わりと終りがあっさりしてますが、でもすぐに琴ちゃんが銀橋に来て『肌に刻み込まれたもの』が続くので、それとセットで考えると、これはこれでヨシ!
舞台では星組が誇るガチダンサー(キワミのぞく笑)(ありちゃん・ぴー・夕渚さん・天希さん・さきっぽ・きさちん)が一人ひとりソロで踊ってワザを披露しますが、みんなキレキレでしびれます。新人公演でこのシーンを見たところ、いかに中堅どころが充実してるか(さりおもあまともひーろーもここには入ってないのに!)、若手にはあんまりダンサーはいないのねとか(オイ)、一瞬で星組の現状がわかりました。
そのあとの銃ダンスへの流れもカッコいい。琴ちゃんはいうまでもありませんが、娘役たちのセンターるりはなや、印刷工たちのセンター夕渚さんも動きがシャープで気持ちいい。琴ちゃんに影響されてなのか、星組のダンスは本当にレベルが高いです。
【休演を乗り越えて】
さて、琴ちゃんが休演しましたが、運よく復帰公演を観ることができました。いろんな噂が飛び交う中、毎日心配でたまらなかっただけに、自分の目で見届けられる奇跡が本当に感謝でした。
琴ちゃんは以前から何となく不調っぽく、ネットでは、東京から一部口パクだと書かれてましたが、前回の遠征で確認したところ、噂通り、サイナモナムールの後は口パクでした。琴ちゃんは本当に歌うと喉が生き物のように動くので一目瞭然なんです。でも実際歌ってる部分に不調はまったく感じさせないので、それもまた謎でした。
2幕から突然の休演、そして文春でポリープ報道からの復帰。
8月24日。琴ちゃんはそんな心配も吹き飛ばす勢いで、全曲生声で、劇場の壁もヒビ割れんばかりに歌ってました。だいぶやつれてるように見えるけど、それは前からか(苦笑)。
ストーリーにも重なるように、星組生のエネルギーが琴ちゃんに向かってぐんぐん集中してるのが目に見えるよう。それが頂点に達するサイナモナムールでは、なこちゃんがもう最初からポロポロ涙をこぼしてました。いつもの琴ちゃんは片手を頬に寄せるだけなのですが、この日は両手でなこちゃんの頬を包み、「お前の涙に抗うのはつらいが」と歌いながら両方の親指で涙をぬぐったのです。あああああ~~~。うっかり双眼鏡に入ってきた水乃ゆりちゃんもめっちゃ泣いてて、あああああ~~~。琴ちゃんについていく!という星組生の熱い気持ちがないまぜになって、いつも以上に熱いサイナモナムールに、なんかわからんけど、私もついていく!と誓って一緒に泣きつつ、鎖が断ち切られるまで、のめりにのめりこむ謎の一体感を感じていました。
琴ちゃんはパレードで階段を下りてくる途中、涙でつまって歌えなくなってしまいました。すぐに復活して笑顔になっていましたが、どれほどの思いをかかえてこの日を迎えたのでしょうか。
ちなみにせおっちはピンク銀橋の時からすでに涙声で揺れてて、ショーから最後までまゆぽんとともに号泣でした(笑)千秋楽では琴ちゃんはせおっちのことを「自分」と称するし、VERDADの時も「目を合わせると泣いてしまう」と言ってたので、ほんまにこの2人は異体同心なんやなと思いました。我が家のリビングで「ことせおアクリルスタンド」もますます輝いています。
千秋楽はライビュを観ました。不調など全く感じさせない完ぺきな舞台。そして堂々たる挨拶。素晴らしかったです。ポリープも完全否定して、じゃあ、どこが悪かってんと、新たな心配を生んだわけですが(笑)
とにかく、あれだけ正々堂々と「自分の意志で帰ってきた」「1ミリの不安も感じさせないで次の大劇場を迎える」と言ってくれたことは、心の底から安心しました。
痩せすぎた身体を戻して、ゆっくり養生してほしいです。
…って、次、姿を見れるのは年末のタカスペ? ううう…寂しいけど耐えるよ!(急に現実)
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