「モンテ・クリスト伯」は、かつて宙組のテルさまがやった作品でした。
猫丸でも書いたはずなのに、まったく内容を覚えておりません。
しかしテルさまのボロボロと、ヒゲ紳士は恐ろしいほどカッコよかった。
そのイメージだけは強く残っているのですが、大丈夫か琴ちゃん!
そう、ロン毛ヒゲ紳士コスプレなんて、最も苦手なジャンルなのにと
怯えていましたが、公演に先だって発表されたスチールは、
まさかの研5ばりのさわやかさ。可愛い琴ちゃんが大好きな私は感涙。
物語の序盤にしか出てこないのに、さらに復讐劇がメインのはずが
この姿をチョイスするあたり、劇団もわかってますな。ありがとう。
【幸せだったはずなのに…】
――19世紀初頭、港町マルセイユ。船長への昇進が決まった若き航海士エドモン・ダンテス(琴ちゃん)は、社長令嬢メルセデス(なこちゃん)との結婚式を挙げ、幸せの絶頂にあった。だが突然、身に覚えのない罪で逮捕され、孤島の監獄に投じられてしまう。彼を陥れたのは貴族のフェルナン(せおっち)、同僚の会計士ダングラール(オレキザキ)、検事のヴィルフォール(あかちゃん)の3人だった。監獄で絶望の日々を送っていたある日、突然現れたフェリア司祭(みきちぐ)から希望の光を得たダンテスは、自分を騙した者たちへの復讐を誓い、生きる目標へと化していくのだった――。
未来への希望に満ちた琴ちゃんエドモンは、不器用ながら誠実さにあふれた優秀な青年でした。白いパンツもまぶしくて、スチール通りのさわやかさは、まさに私の理想のタイプ100点満点。ロミオ・ルーチェ・VERDADで満たされていましたが、自毛短髪研5ナポレオンスタイルまで見せてもらって、これで最低保障してもらった気分です。次のルスダンも原作読んで、あまりに似合いすぎてて、すでに大感動していますし、あとは1789か新作海外ミュージカルをお願いしますね(ちゃっかり)。
エドモンはメルセデスとの結婚と船長就任で、まさに人生順風満帆。そんな2人を横目で見ながら、メルセデスが好きだったせおっちフェルナンは嫉妬メラメラ、船長になりたかったオレキザキ・ダングラールは先に出世されたことで嫉妬メラメラ。おのれダンテス許すまじ!!!!!となっていました。
せおっちは色男ぶりに磨きをかけつつ、「クワッ」と音が聞こえんばかりの目力で、嫌な男を演じています。卑怯な手口で奪い取ったなこちゃんを何度か平手打ちするシーンがあるのですが、スイングが小さすぎて、そこだけ急に女っぽい。
オレキザキは安定の演技力です。何をやらせてもくどいのが素晴らしくて、もはやただのおっさん役者にしておくのは惜しい。ロミジュリのピーターがどうしても忘れられないので、今後もあらゆる可能性を引き出してほしい。
そんな2人が企んだ陰謀に、検事補あかちゃんヴィルフォールが、ダメ押しの決定打を下し、ことちゃんは孤島の監獄に入れられてしまいます。フェルナン・ダングラール・ヴィルフォールの三悪人の『罠にはめてやる』ソングが盛り上がります。あかちゃんは相変わらず目をむいていて、股上が長いですが、歌が上手くて、いまや生え抜き星組生みたいになじんでいます。
【ありちゃんのさらなる開花に期待】
前回の宙組公演では現代の演劇部がストーリーテラーをつとめていましたが、今回はモンテクリスト伯の手下となるルイジ(ぴーちゃん)とベルツッチオ(ありちゃん)がつとめます。特にベルツッチオは「復讐の悪魔からエドモンを守りたい」との思いで常にそばにいるため、ひときわ露出が多く、2番手のような印象になりました。
ありちゃんはこの公演から星組にやってきましたが、ものすごく良い。もともと“なぜか”星組に行くんじゃないかと予想され続けていましたが、案の定、琴ちゃんとの相性も、星組全体ともバッチリでした。化学反応が起こるという感じではなく、うまく溶け込みながらエネルギーが増していくイメージ。愛ちゃんの時は明らかに「全然違うタイプの人来た!」って感じでしたが、ありちゃんはもっと開花しそうな予感がふくらみます。月組でも活躍していましたが、最初の抜擢にしては思うほど弾け切ってなかった気がしていました。今回の組替えは星組でトップになるためだと思うので、琴ちゃんのもとで学び、みんなと信頼関係築いて、別人級に成長してほしい。もうすっかりMY組子気分です。
でもニエグシュ…大きくなったなあ(みっさまファンは皆感慨深くなる)。
【琴ちゃんの低音イケボ炸裂】
――孤島の監獄シャトー・ディフの暗い独房で、琴ちゃんは司祭みきちぐからあらゆる学問や知識を学びました。やがて司祭は財宝のありかを教えたのち亡くなり、その死体と入れ替わって脱獄に成功。ぴーちゃんやありちゃんの密輸船に助けられてモンテ・クリスト伯と改名し、20年近くかけてついに新しい人生を歩み出しました。3悪人、そしてせおっちに嫁いだ、なこちゃんに復讐するために…。
今回の作品では、琴ちゃんの声色・歌・演技の七変化が見どころとなっています。
希望に満ち溢れた好青年が絶望のどん底へ。独房で抜け殻のようになったエドモンがメルセデスを思って歌い、「君に会いたい」とつぶやくところは胸を締め付けられずにはいられません。やがて司祭に巡り会えたことで脱獄ヘの希望を見出しますが、そのエネルギーの源はただひたすら復讐への執念のみでした。密輸船に助けられたエドモンは、持ち前の船長スキルに加え、司祭から鍛えてもらった頭脳で、たちまちありちゃんたち船員に尊敬され、みんなが手下となっていきます。
こうして20年の歳月を経て、ついに復讐の時がやってきます。
「私はモンテクリスト!」と、琴ちゃんが黒いマントをバサッと脱ぎ捨てると、ロン毛ひげ紳士の装いが登場するのですが、(ノ∀`)アチャー(ファンです)
しかしながら、復讐に燃えたぎり、ひたすら憎しみに突っ走る鬼気迫った演技は絶品。冷酷なオーラ、ギラギラと炎が燃える瞳に吸い寄せられ、これぞ七変化。ナンバーも全部いいし、おすすめは「くそくらえだぁっ!」の叫びが最高、低音イケボが炸裂です。とろける甘ボイスのさわやか研5琴ちゃんはどこいった。
オレキザキ、あかちゃん、せおっちと、次々復讐を果たしていきますが、どれもこれも気分はすっきりしません。復讐にすっきりする結末などないのです。ありちゃんがそのつど琴ちゃんに「そらみたことか」と訴えるのは、みきちぐ司祭に言われていたことと同じ。しかし聞く耳持たず、倍返ししてやらねば気が済まないエドモンは、哀れにすら見えてきます。それほどに裏切られた絶望と監獄での気が遠くなる時間は、彼をがんじがらめにしてしまう重い鎖だったのでしょう。
【琴VSなこ、配信なら遠慮なく泣ける】
そして、第4のターゲットはメルセデスです。「いつまでも待ってると言ったくせに、金持ちのせおっちに1か月で嫁ぎやがって」と憤るエドモン。可愛さ余って憎さ百倍とはまさにこのこと。
しかしその前に、メルセデスの息子・アルベール(修造娘)が、父せおっちを殺されたことで、エドモンに決闘を申し込んでいました。息子に勝ち目があるはずないと焦ったメルセデスは、エドモンに決闘をやめてもらうよう頼みに行くのですが……ここからがものすごい見せ場となります。
ところでなこちゃんの可愛さは異常。さらに琴ちゃんの相手役として実に素晴らしく、私の中ではすでに「みっちゃんのふうちゃん」に匹敵するほど。琴ちゃんが手加減せず踊れる相手は、なこちゃんただ一人だと思いますし、こんなに美しくて、ひたすら慕ってくれる嫁、どこを探してもいません。最初は琴ちゃんが塩だったので全然うっとりできなかったのですが、『めぐり会いは再び』から明らかに雰囲気が変わって、今ではすっかりラブラブになり、ますますヲタクも幸せです。なこちゃんについての詳細はまた後日演説。
メルセデスがエドモンと対峙し、説得するシーンは緊迫感にあふれています。モンテクリスト伯がエドモンだとわかってて挑むところから、2人は戦闘モードバリバリ。しかしなんと2人とも、かつてエドモンが婚約時にメルセデスへ送ったペアの貝殻のネックレスをつけているんです。そこに気づいただけでもう涙腺直撃、そこからは涙なくして見られません。
なこちゃんは、無邪気な若い娘から20年の苦労を経た母親へ変化する演技が圧巻でした。かつて愛した男だけど、息子を守るためなら自分の手で殺してでもという“マジもんの母親感”が伝わるんです。「え、エドモン気の毒…だけど自分も母親だし、そうなるか…」とか、妙に現実に戻らされるほど。そして、その演技力がのちの説得力にもつながっていくのでした。もはやマスクの下は鼻水でグズグズです。琴ちゃんの作品で、過去一番泣いてるかもしれません。
なこちゃんは外見の可愛さから、みゆちゃんのような演技派とは違うと思われがちですが、なんのなんの、迫る勢いで上手いんじゃないでしょうか。
ここから、エドモンにとりついていた復讐の悪魔が抜け落ちていく瞬間など、あらゆる感情の変化が琴ちゃんの見事な演技力と豊かな声色によって伝えられていきます。息をつめて物語に没頭させられるため、それをいちいちすごいとは思わず、あとで気づくわけですが。
修造娘との決闘のシーンは、さわやか白パンツに黒いベストがステキー! 音楽も素晴らしくて、「手を伸ばせば」のデュエットは特に最高です。カラオケであったら是非歌いたいです。
せおっちとオレキザキのご当地アドリブは、普通ここでは入れへんやろ、みたいなシリアスな場面でぶっこんできて、あかちゃんがそれに笑わず進行し続けるという荒業もみどころです。
大劇場でやっても良かったのに、むしろやってほしかった。全ツなんてもったいない!と思うほどの作品でした。
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