『モアーダンディズム』

モアダンディズムじゃなく、モアーダンディズム。延ばさなきゃいけないんですね、そこは。そういうこだわりが昭和っぽくて好きです。

初演の真矢みきさんは、私が宝塚にハマって間もない頃のスターで、「カリスマ」でした。贔屓とか関係なくカリスマ。そのため、武道館のコンサートにも遠征しましたし、写真集も買いました。そんなみきちゃんのカッコよさを最高に表したのが『ダンディズム』です。退団してからインタビューしましたが、めちゃくちゃいい人で、私のことを何度も名前で呼んでくれました。そんな永遠のカリスマみきちゃんをリスペクトしよう!

(1)オープニングは、大階段を使って4色に分かれた群舞から。秋らしいくすんだ色合いもきれいだし、娘役の男前な衣装がすてき。左右に交差したり、激しくはないけど小粋なダンスでとてもよい。そこへ、真っ赤な衣装の琴ちゃんが下りてきます。

 みきちゃんは美声でしたが、実はちりめんビブラートだし、ダンスもハッタリの魔法使いでした。琴ちゃんはその難点が長所ですから、いうことなしでダンディズムを継承しています。せおっち・愛ちゃんと3人で踊るダンスもなんともいえない味があり、適度なぬるさがたまらないオープニングとなりました。

(2)愛ちゃんの銀橋渡り。チャイナみたいな形の真っ白な衣装がすごくきれいで、愛ちゃんによく似合っています。しっとりとした曲も古いけどとてもいい。

(3)「ミッション」謝先生の新場面です。これが素晴らしい。もしかしたら雑誌の歌劇とかで内容が解説されてるのかもしれませんが、読んでないのでそこは知りません。しかし、私には見える。その後の彼らが。

衣装の感じから、住んでいる場所は標高の高い、乾燥した地域かしら。琴ちゃんの髪型がやけにぴったりとしたフォーマルなのが、意表をついていてカッコいい。みんなの先頭を切って、琴ちゃんがキレッキレに踊りだし「オレについてこいやああああ」みたいな声が聞こえてきそうでしびれます。あまりに動きが早くて、誰がいるのかすら追えません。琴ちゃん政権になってダンサーが重用されていますので、きっとあまとやさりお、きさちん、踊れるゆるキャラ・夕渚さんやきみちゃん。女あまと・るりはなやご贔屓の鳳花るりなちゃんもいるに違いない。でもきっと最後まで確認できないでしょう。手紙のリレーをして、最後に琴ちゃんはバン!と撃たれ専科(よく撃たれるから)で命を落としてしまいます。

ここから私の妄想が広がります。すばやく上手花道に移動した琴ちゃんは、透き通った声でなこちゃんに「勇気を出して、仲間がいる」と歌いますが、この声があまりにも優しすぎるため、よけいに悲しくて、胸がはりさけそうになります。「あなたがいなけりゃ意味がない!」と、私はなこちゃんになって絶望します。どれだけせおっちやひーろーがなぐさめにきたって、立ち直れるはずありません。

なぜなら、琴ちゃんは「この革命が成功したら結婚しよう」とプロポーズしてくれていましたし、なこちゃんの胎(はらbyゆら)には琴ちゃんの子が宿っていたからです。やがて、琴ちゃんに瓜二つの、歌とダンスが得意な(違)男の子が生まれました。そしてその遺志を継ぐかのように、みんなのリーダーになるべく育っていきます。そこでようやく、なこちゃんは泣き笑いの表情をやめ、心の底から笑顔をみせるようになるのでした(背後にさっきの琴ちゃんの歌がまた流れる)。

みたいなストーリーがだよ! 知らんけど。

(4)パステルな娘役たち。岡田先生のショーにありがちな場面です。赤ちゃんの帽子みたいなでっかいのをかぶって、ドレスも古めのデザインだけど、色がパステルでキレイだし、娘役だったら出てみたい場面かもしれない。私も端の方でスカートひらひらさせたい。

(5)キャリオカ。『ダンディズム』といえば「キャリオカ」といわれるくらい有名な場面ですが、私はイマイチその良さがわかりませんでした。なんかやたら長くて、突然ふる~い音楽が始まったり、全体的には「困惑する」って感想でした。でも今回、何度も見てると、だんだんクセになる感じがわかってきました。

 階段に一人立つ琴ちゃん。軽快に降りてきてみんなと合流。黒燕尾でもついついキレキレに踊ってしまい、はけ方も異様にかっこいいのでぜひ注目してください。

天寿・あかちゃん・ぴー・きわみ・さりお・あまとで出てくる6人口は、体を横にしてジャンプしながら出てくるポーズとか、左右にチャッチャとやるとことか、見てみたいポーズの詰め合わせで、とてもよい。ここはとてもよい。

 みんなが花道を作ってくれる中央を、なこちゃんと腕を組んで琴ちゃんが登場する場面は、なこちゃんの強烈な熱視線がポイントです。琴ちゃんのほっぺたに穴が空くのではないかと思われるほど、ニッコニコで見つめまくっていますが、基本塩な琴ちゃんは見返しても眉間のしわを崩しません。もうちょっと優しくしたれよなあ。

 そんなこんなでこのキャリオカ、楽しみどころをまだうまく説明ができるレベルには達していませんが、「チャランチャランチャランチャラッラッラ」と軽いエレキギターの音とか、「パラッパッパッパ」なトランペットとか、懐かしのキャバレー音楽的な、ダン池田的な、そういうのを楽しむ世界なのかなと感じています。

(6)愛ちゃんの軍服。まず、えりちゃんを中心とした若者たちがずらりと並び、歌います。唐突なスター不在シーンに困惑。えりちゃん頑張れ!眉毛が薄いぞ! 修造娘は相変わらず小さいまひろくんみたいで可愛い。VERDADでカラオケ店員が好評だった鳳真斗愛くんが、いろいろ特徴ありすぎて、どこにいても目を引かれてしまう。

 愛ちゃんが白い軍服で、ぴーやきわみ、天寿さんたち、娘役を率いて歌い踊ります。立派な体格で、これ以上ないほど軍服が似合う。2番手での退団は残念ですが、ファンも成仏できるシーンではないでしょうか。

(7)ハードボイルド。キターーーーーー! 私の中で、ヅカ作品すべてを通しても上位に入るほど大好きなシーンです。名曲「paradiso」は南佳孝の曲だそうです。知らなかった~そういわれてみれば確かに。わたるちゃんの時はチャイナでしたが、ここはみきちゃんのストライプスーツ一択。これこそがダンディ。

 

 スポットライトの下、せおっちとあかちゃんのタンゴから。おずおずと互いの動きを確かめるように、ぎこちなさが初々しく…って、違うがな! よりによってなぜこの2人やねん。愛ちゃんシーンのぴーとあかちゃんをトレードし、ぴーと退団ご祝儀のかなえちゃんでよかったがな。でもいいの。せおっちだから。せおっちとあかちゃんは正義だから。

まるで公開処刑のような手に汗握るダンスの後、幕があがると上手にかなえちゃん、下手にさりお、そして真ん中に琴ちゃんが浮かび上がります。おおおお~~~。 

 太いストライプスーツにえんじのシャツ、白いネクタイにハット。そしてコンビの靴!これよ、これこれ! 「胸の傷が痛い痛い…」低音で粘る歌声。ここから欲しいと思う絶妙のタイミングで美しいビブラートが入ります。なによりメロディーが名曲すぎて、しびれの連続です。ポケットに手をつっこんだまま歌うとかダンディ。背後にくっきりと真矢みきが見える。みきちゃんへのリスペクトを感じさせることにめちゃくちゃ感動しました。男役名物のかけ声も連発ですが、ここではウッとかハッ系ではなく、ビール飲んだ後みたいな吐息まじり系なのもポイントです。

途中から男役たちが入ってきて踊るダンスは、これぞ羽山先生全盛期の振付。ここぞとばかりに男役らしいカッコよさをみせつけるチャンスです。かなえちゃんは得意の脳震盪起こしそうな前髪バッサバサをキメまくっていました。すべてがツボすぎて、息をするのも忘れる数分間であっという間に終わってしまう。そして、琴ちゃんのおひかえなすってで締める。完璧です。琴ちゃん在団中にこのシーンができたことだけでも、土下座して感謝を申し上げたいと思います。

(8)ロケット。ご贔屓のるりなちゃんをロックオンするも、最初しばらく麻丘乃愛ちゃんと間違ってました。おかしいなあ、動きにキレがないなあと思ったら、顔似すぎやねん。

(9)テンプテーション。悪くはないのですが、みっさまトップの時にやったので、期間が空いてなさすぎで、ただただ新鮮味がない。しかし、あの時の娘役の琴ちゃんは本当にかわいかった。ここ、やっぱり「明日へのエナジー」がよかったかも。

(10)ラ・パッション。せおっちの銀橋です。みっさまが着てた最高にロマンチックな黄緑色の衣装で嬉しくなりました。ノリノリで歌うせおに、最近は手拍子介護が入り、かなり盛り上がっています。まるで会場全体が「がんばれ、せお!」「負けるな、せお!」と応援しているかのようです。勢いづくせおっちもリズムに乗って肩とかカクカク動かすのですが、琴ちゃんの動きを思い出して、こういうのはもう天性の違いでどうすることもできないのだと世の不条理を感じ、たたきつける手のひらにも思わず力がこもります。「がんばれ、せお!」「負けるな、せお!」

(11)アシナヨ。衣装がめちゃくちゃ素敵です。琴ちゃんとなこちゃんがグリーンがかったブルーで、ふわふわのデザインがたまらなくきれい。うごくとますますロマンチックです。歌はいうまでもありません。愛ちゃんの濃いブルーの衣装もすっごいカッコいい。ここのシーンもとてもよかったです。

(12)パレード。いきなりしんきくさい歌でどうした。オープニングの歌ではあかんかったのか。でも琴ちゃんが歌うころには、口ずさめるような軽快なメロディーになっていました。琴ちゃんの羽はナイアガラではなく、後ろが短い羽が何重にも重なったモフモフでめちゃくちゃ可愛いんです。琴ちゃんに似合っててよかったよ。

 あと、個人的にとてもうれしい変化がありました。琴ちゃんはメイクでずーっと、たとえロマンチックレビューであっても、どんなフェミニンなスタイルでも、ずーっと、もみあげを尾崎紀世彦にしていたんです。それを今回、ようやくやめてくれました。れおんくんの呪縛からやっと抜け出たのかなと。だから私は前から言うてるではないか。琴ちゃんはとうこちゃんの系譜なのだと!

 そんなこんなの「モアー・ダンディズム」でした。

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